薪は“ナラ”が最高は本当か?
薪ストーブの話題になると薪の原木になる樹種の話題はつきものですが、よく言われる「ナラの薪が最高」とういのは本当か?というお話です。
私は薪ストーブ生活を始める前は、ナラの薪が最高=ナラの薪が一番部屋を暖めることができるということだろうと思っていました。しかしよく考えてみるとナラは火力では針葉樹に敵いませんし、火持ちの良さは基本的には比重で決まるので、ツバキやカシ、ケヤキにだってナラは敵いません。個人的には実際に燃やした体感でも、ナラはサクラや、敬遠されがちなクリと比べても大きな差を感じることはできませんでした。
ではなぜナラが賞賛されるのか?
その答えは恐らく歴史的に、コナラが「里山で圧倒的に手に入りやすかったから」だと思います。
薪原木の樹種の評価軸を①手に入りやすさ、②割りやすさ、③火持ちの良さで考えたとします。
ケヤキやツバキは火持ちが良いが、それほどたくさん継続的に手に入るわけでもなく、割るのは大変。ケヤキなどは自然下では搬出の大変な崖地にあるのが普通です。
サクラは、火持ちが普通だが、割りやすい。山には比較的たくさんあるが、純林を形成するほどではない。
薪として好まれる樹種でも一長一短あるのがわかります。
そんな中でナラは火持ちと割りやすさのバランスがそこそこな上で、搬出しやすいなだらかな山にちょうどいい太さの物が圧倒的にたくさんあった。必然的にナラを薪として使う機会が多くなっていき、一番ポピュラーになっていった。「サンマは目黒に限る」とはちょっと違いますが、「薪はナラに限る」みたいなちょっとした勘違い。それが「ナラの薪が最高」という言説の真相なんじゃないかと思います。昔は用材の用途での需要がそれほど高くなかったのも薪に使われやすかった一因かもしれません。
ナラの魅力はただ「手に入りやすい」ということだったわけですから、「ナラの薪は最高」という幻想に取りつかれ、ナラを求めてさまよい続けるのはそれこそ本末転倒です。今では私は樹種選びに目くじら立てずに手に入ったものから順に割って燃やしていけばいいと考え、自宅のストーブではなんでも燃やしています。
実際、体感レベルでは樹種ごとの火持ちは、躍起になって選ぶほど差はないなあというのが正直な感想です。