【伐倒】ツルは高い方がクサビで起こしやすいか?
先日、講習会に講師として伺った際に、ツルの高さ=追い切りの高さの説明で
「追切りの高さは一般的に受け口下切りの高さから斜め切りの上端の間で選べる(状況に応じて選ぶ必要がある)」
と私は前置きし、ツルを高く作るとき低く作るときでそれぞれのメリットデメリットをいくつか並べたのですが、
その時に「ツルを高く作るほうがクサビで起こしやすいというメリットがあると私は思う」と発言しました。
帰宅後にその部分について知人からメールで質問を受けて、メールで画像と文章で説明したのですが、
簡単なものとは言えせっかく画像をつくったので、画像を削除する前にここで使おうと思いました。
なぜツルが高い方がクサビで起こしやすいと考えるか
理由は2つです。
一つ目は追切りが高い方がクサビで樹幹全体を起こす力が若干少なくて済む(はずだ)からです。
伐倒ではツルの下端付近が軸となって樹幹が回転運動をします。
追切の高さが違うと、ツルの下端(支点)とクサビを打ち込む部分(作用点)を結んだ長さが変わります。
受け口下切りで追切りするときそれは一番短く、高くなるほど長くなります。(図1の青線と赤線)
この長さ=テコの長さの差がクサビを打ち込むのに必要なエネルギー差になるだろうという考えです。
二つ目の理由は、完成したツルの追切側の上端から下に向かって入る“裂け”が、
ツルが高いときの方が入りやすい(はずだ)からです。
木は倒れる時にツルの追切側の上端から下に向かって裂けが入ります。
この裂けが入らないと樹幹は倒れ始めることができません。
この部分の裂けやすさも、ツルが高い方がスムーズに違いないだろうという考えです。
長い割りばしと短い割りばしを上端引っ張って割るのに必要な力は、これもテコですから長い方が少ないはずです(図2)
この裂けが入らないと基本的には木は倒れることができないと書きましたが、
その部分が下に裂けないと、さっさと倒れて安定したいと思っている樹幹は、
上に裂けるしかなくなってしまいます(いわゆるバーバーチェア)
「割れやすい木は追切を高く=ツルを高くしなさい」という教えはおそらくこの理由です。
以上二つの理由で、私は「ツルが高い方が、クサビを使う時に省力できる」と考えています。
当然、ツルが高いことの大きなデメリットもあるので、私もクサビを使う時に必ずしもツルを高くしているわけではありません。
そのメリットデメリットの話は、また別の記事で書きたいと思います。